現代軽文学評論

ライトノベルのもう一つの読み方を考えます。

2017年の回顧と展望

 こんにちは。年の瀬となり、色々なところでこの一年間の回顧が行われています。『このライトノベルが凄い!』も刊行され、各種ブログでもこの一年間のおススメ作品がまとめられているのを見るにつけ、いかに自分が時代に取り残されているかを痛感します。とはいえ、このブログは流行を追うのでなく、現代日本ライトノベルを「評論する」ことです。ですので、今回はこの一年の本ブログを振り返り、回顧と展望を記してみたいと思います。

 そんなわけで、今回のお品書きは、(1)2017年下半期アクセス数ランキング、(2)ブログ主的2017年の思い出の記事の二本立てでお送りします。よろしくお付き合い下さいませ。

―目次―

 

2017年下半期アクセス数ランキング

第1位 素晴らしきものへの愛を語る

 栄えある第1位は、この記事。間違いなく2017年を代表する素晴らしい作品です。小説『スーパーカブ』は、心理描写と心情風景の美しさ、スーパーカブへの愛情のどれをとっても見事な物語でした。

 やはり、話題になった作品をいち早く紹介したことがアクセス数の上昇に貢献したものと思われます。また、一緒に紹介した作品(入間人間安達としまむら』、橋本紡『空色ヒッチハイカー』、一二三スイ『世界の終わり、素晴らしき日々より』)も良い作品ですので、併せてお読みください。

 

第2位 読み手に挑戦するライトノベル

 長い休止を挟んでいた本ブログですが、その間ずっとアクセス数を稼ぎ続けていたのがこの記事です。米倉あきら『インテリぶる推理少女とハメたいせんせい』。2013年4月に発表した記事です。

 これはもう、奇書としか言いようのない伝説的な作品なのですが、米倉さんがその後、まったく作品を発表しておらず、消えてしまったことが悔やまれます。いつか衝撃的な再デビューを果たすことを期待しています。

 

第3位 彼女の「革命」の精神

 第3位はスクールカーストものの奇作、仙波ユウスケ『リア充になれない俺は革命家の同志になりました』。ヒロインが革命家というとんでもない作品で、全体としてバランスの悪さは気になりますが、ヒロインが一筋縄ではいかない強烈な魅力を放っている作品です。

 この作品を突っ込んで紹介しているブログは、ほとんど無いと思いますが、この素晴らしいヒロインの「革命」の精神を掘り下げた記事ということで、私自身も満足しているところです。

 

第4位 ヒストリカル・ファンタジーへの挑戦

 第4位は、野村美月『アルジャン・カレール』(上下)を紹介した記事。最近、新作を発表していない野村さんですが、彼女の作品のなかでも異色を放つ作品です。この作品を「ヒストリカル・ファンタジー」という欧米での文学ジャンルを手がかりに考えてみました。

 実在した歴史をフィクションに再構成することは、とても大変なことです。一歩間違えれば、トンデモな歴史観へと迷い込みかねません。そんな方向へと陥ることなく、挑戦し続ける作家の作品として紹介しました。

 

第5位 物語のなかのフィクション

 第5位は、枯野瑛終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?』シリーズです。この人気作の成立の背景を考察し、さらにこの物語のなかの「創作物語〈フィクション〉」という言葉に注目して記事を書きました。

 枯野さんはメディアへの露出も多く、調べていてとても楽しい記事であったことを思い出します。色々な解釈が可能な作品なので、皆さんも深読みをしてみてはいかがでしょうか。

 

ブログ主的2017年の思い出の記事

 ここまで、2017年下半期のアクセス数ランキングということで、多くの方に読んで頂いた記事の紹介でした。ここからは、ブログ主にとって思い出深かった記事を紹介しようと思います。お暇があれば、ぜひお読みください。

 

異世界」とはどのような世界なのか

 この記事は、豊田巧異世界横断鉄道ルート66』を紹介したものなのですが、二つの点で思い入れがあります。一つ目は、「世界設定、キャラクター、ストーリー展開をどのように取り結ぶのか」という観点を明確に示したということです。本ブログが本格的な「評論」を目指す以上、私自身の観点を示すことが求められると考えるのですが、それを多少なりとも果たすことができたのではないかと思うのです。

 二つ目は、この記事が作者の豊田先生のフェイスブックで紹介されたことです。全体としては辛口の評価をしたのですが、豊田先生は好意的に紹介して下さいました。この場を借りて、お礼申し上げたいと思います。

 

だから、僕は世界を救おう/地球が救われた未来で、僕らはまた恋をするから/終わってしまった物語を想像する

地球が救われた未来で、僕らはまた恋をするから ― 今井楓人『救世主の命題』(その二) / 終わってしまった物語を想像する ― 今井楓人『救世主の命題』(その三)

 この記事は、今井楓人『救世主の命題〈テーゼ〉』全3巻を紹介した記事です。2013年の作品で、6巻計画のところを3巻までで打ち切られた作品です。この物語は、コンプレックスだらけの主人公が真実の愛を獲得してゆくものなのですが、私はこの作品が好きで好きでたまらず、いつか紹介したいと思い続けていました。

 掲載した記事は、合計2万2000字(原稿用紙で55枚分)という長大なもので、3回に分けて紹介しました。特に「その三」では、未完の物語の続きを想像するという、大それたことまで書かせてもらいました。最近、打切りかと思われた作品がファンの支持で継続する例がありますが、3年も前に完結した『救世主の命題』は、もう続刊が出ることはないでしょう。この記事は、私なりの作品への哀悼の辞なのかもしれません。お恥ずかしいかぎりです。

 

 以上、「2017年の回顧と展望」と題して、この一年間の歩みを振り返ってきました。数々の文章上の欠点を抱えているにもかからわらず、2016年12月に再開して以来、おおむね月一回のペースで「評論」を続けることが出来たのはとても嬉しいことでした。このブログを読んで下さったすべての方にお礼申し上げますとともに、今後も頑張ってゆきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 

(2018年1月3日 一部修正)

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