現代軽文学評論

ライトノベルのもう一つの読み方を考えます。

現実とフィクションのはざまの村々 ― 雲雀湯『転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件』(その二)

雲雀湯『転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件』で描かれる「田舎」は、フィクションでありながら、ある種の〈現実〉が反映されています。本作のなかの「村を離れるということ」の意味を考えます。

土の香りに抱かれて生きる ― 雲雀湯『転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件』(その一)

今回は、雲雀湯『転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子だと思って一緒に遊んだ幼馴染だった件』(スニーカー文庫)を紹介します。本作の構成、系譜、モティーフを取り上げて、作中の「土の香り」に注目します。

交錯と別れの小さな火花 ― 川原礫『ソードアート・オンライン プログレッシブ』「星なき夜のアリア」

劇場版『ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア』が公開されました。そこで今回は、原作である「星なき夜のアリア」の味わいを精読してみようと思います。

青春ラブコメの岐路と2010年代のライトノベル ― 渡航『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(その一)

2010年代のライトノベルを象徴する作品である渡航『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』。今回は、同作の第1~6巻を論じながら、2010年代初めの「青春ラブコメ」の岐路について語ります。

2010年代を代表するライトノベルとして ― 今井楓人『救世主の命題』再論

コミックマーケット97の『ラノベ読み合同誌』に寄稿した原稿をもとに、私の愛してやまない野村美月=今井楓人『救世主の命題』についてもう一度論じてみたいと思います。

不安定な過去、その不気味な創出 ― 伊藤ヒロ『異世界誕生 2006』

今回は、伊藤ヒロ『異世界誕生 2006』(講談社ラノベ文庫、2019年9月発売)を紹介します。色々な方が褒めていますが、私自身は、ぞっとするような、背筋の凍りつく思いを感じました。その正体について、考察してみたいと思います。

差別と抑圧の世界をぶっとばせ ― 輝井永澄『空手バカ異世界』

頭がおかしくなるような勢いに溢れた快作が現われました。独特の自己言及構造から立ち上がる、差別と抑圧の世界をぶっとばす物語について、論じてみたいと思います。

2018年の回顧と雑感

2018年は個人的には慌ただしく1年で、記事更新の回数が減ってしまいました。回顧と雑感を書きながら、最近刊行されているいくつかの作品について語りたいと思います。

かくしてお祭り騒ぎは始まった ― 山中智省『『ドラゴンマガジン』創刊物語 狼煙を上げた先駆者たち』

今回は、ライトノベルに関する専門研究者の本を紹介します。1980年代後半~90年代前半の、ライトノベル黎明期の「お祭り騒ぎ」の時代について考えるきっかけとなれば幸いです。

白鳥士郎の苦悩と躍進と2010年代のライトノベル

『りゅうおうのおしごと!』特集第3弾の今回は、作者・白鳥士郎にスポットライトを当てます。2010年代のライトノベルの動向と重ね合わせながら、白鳥士郎の苦悩と躍進について語ります。

もう一つの師弟関係、あるいはオッサンの熱くてシブい戦い ― 白鳥士郎『りゅうおうのおしごと! 7』

白鳥士郎『りゅうおうのおしごと!』は、師弟関係を重要なテーマにしています。今回は、主人公の師匠=オッサンの熱くてシブいたたかいの物語ついて語ってみたいと思います。

『りゅうおうのおしごと!』の押さえておきたいポイント

現在放送中のアニメ『りゅうおうのおしごと!』が話題です。本作は、私も大好きなお話なので、これから全3回に分けて語ってゆきたいと思います。第1弾は、イントロダクションとして本作の押さえておきたいポイントについて語ります。

かくも饒舌な青春の物語 ― 大澤めぐみ『6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。』

大澤めぐみ『6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。』(角川スニーカー文庫、2017年11月発売)。饒舌でありながら、一つひとつの言葉が胸に染み入るような、とても繊細な作品を紹介します。

2017年の回顧と展望

今回は、現代日本のライトノベルを「評論する」という趣旨に即して、2017年を振り返り、回顧と展望を行います。①2017年下半期アクセス数ランキング、②ブログ主的2017年の思い出の記事の二本立てです。よろしくお付き合い下さいませ。

ライトノベルにおけるアンソロジーの位置とその歴史

今回は、前回の記事「アンソロジーの味わい」の番外編。ライトノベルにおいてアンソロジーがどういう意味を持っているのか、どのような素晴らしい作品があるのかを紹介します。

アンソロジーの味わい ― 井上堅二ほか『ショートストーリーズ 僕とキミの15センチ』

このほどアンソロジー『ショートストーリーズ 僕とキミの15センチ』(ファミ通文庫、2017年10月発売)が刊行されました。参加した作家は総勢20名の豪華版です。今回はこの新刊を紹介しながら、ライトノベルの新しい動向についても語ってみようと思います。

物語のなかのフィクション ― 枯野瑛『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』

現在注目されている枯野瑛『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』全6巻(スニーカー文庫、2014~17年)。アニメ版からはどうしても見えにくくなってしまう本作のもう一つの側面について語ってゆきます。

ヒストリカル・ファンタジーへの挑戦 ― 野村美月『アルジャン・カレール』

今回は、野村美月『アルジャン・カレール』(ファミ通文庫、2014年10月発売)を取り上げます。常に彼女にしか書けないような作品を出し続ける実力派作家による「ヒストリカル・ファンタジー」について、今回は語ってみたいと思います。

終わってしまった物語を想像する ― 今井楓人『救世主の命題』(その三)

これまで連続で紹介してきた今井楓人『救世主の命題』ですが、残念なことに3巻目で打ち切りとなってしまいます。最終回では、この作品を心から愛する一読者の勝手な想像を通じて、この終わってしまった物語の可能性を想像してみようと思います。

地球が救われた未来で、僕らはまた恋をするから ― 今井楓人『救世主の命題』(その二)

前回に引き続いて、今井楓人『救世主の命題』について語ります。第2巻と第3巻では、どのように物語は展開するのでしょうか。今回も、私の深く思い入れてきた作品を、ネタバレ全開で紹介いたします。どうぞご容赦ください。

だから、僕は世界を救おう ― 今井楓人『救世主の命題』(その一)

今回は、ぜひとも紹介したいと思いながら出来ていなかった作品について語ります。それは、今井楓人『救世主の命題〈テーゼ〉』(MF文庫J、2013年6月発売)。主人公とヒロインたちをめぐる温かく切ない恋愛を描いた、もう誰も語らないかもしれない良作です。

素晴らしきものへの愛を語る ― トネ・コーケン『スーパーカブ』

今回はトネ・コーケン『スーパーカブ』(スニーカー文庫、2017年5月発売)を取り上げます。地味で、丁寧で、そして愛に溢れたこの作品について、似た作風を持つ作品群と重ね合わせながら紹介してみたいと思います。

彼女の「革命」の精神 ― 仙波ユウスケ『リア充になれない俺は革命家の同志になりました』

最近の「学園もの」では、スクールカーストを題材としたものが多く見られます。今回はそのなかでも、劇薬級の作品であった仙波ユウスケ『リア充になれない俺は革命家の同志になりました』全2巻(講談社ラノベ文庫、2016年)を紹介します。

みんはな10年前のことを覚えているかい? ― 木緒なち『ぼくたちのリメイク』

今回は木緒なち『ぼくたちのリメイク』(MF文庫J、2017年3月発売)です。この作品は、2006年という具体的な年を指定している点が注目されます。そこで、この10年間の時代の変化について、本作ともゆかりのある作品も紹介しながら考えてみます。

劇場版が原点を再発見させる ― 川原礫『ソードアート・オンライン』

劇場版『ソードアート・オンライン オーディナル・スケール』が公開されました。そこで今回は、SAOシリーズについて、劇場版を通して浮かび上がった、この作品の原点について考えてみたいと思います。

「異世界」とはどのような世界なのか ― 豊田巧『異世界横断鉄道ルート66』

近年流行りの「異世界もの」について、ちょっと変わった作品が生まれました。豊田巧『異世界横断鉄道ルート66』(ファンタジア文庫、2016年12月発売)について、世界設定、キャラクター、ストーリー展開の3つの要素に整理して論じてみます。

短編小説賞と「家族」問題 ー 五十嵐雄策『幸せ二世帯同居計画』

五十嵐雄策『幸せ二世帯同居計画』(電撃文庫、2016年11月発売)が刊行されました。知る人ぞ知る、作者のデビュー作です。それは、短編小説賞の受賞作であり、しかも当時珍しかった「家族もの」でした。そんな作品を今回は紹介します。

軍事リアリズムは米軍基地を描く?

ライトノベルはエンターテイメント小説ですが、実は政治の争点となったり、社会問題とされたりする題材が描かれています。今回は、ストーリーのなかの「軍事リアリズム」と結び付いた米軍基地という題材について考えてみます。

読み手に挑戦するライトノベル ― 米倉あきら『インテリぶる推理少女とハメたいせんせい』

米倉あきら『インテリぶる推理少女とハメたいせんせい』(HJ文庫、2013年3月発売)が一部で話題になっています。私も一読して衝撃を受けました。この「奇書」について今回は考えてみたいと思います。

富士見書房と築地俊彦

ファンタジア文庫における2000年代のラブコメ+ファンタジー路線を牽引した代表者・築地俊彦。ところが、ファンタジア文庫は、2010年代に入って路線の変化を見せています。今回はこの路線変化と築地俊彦について語ってみます。